音は「脳」で聞いている

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音は振動である。人間の可聴域はおよそ20Hzから20kHzで、年齢とともに高い音が聞こえにくくなる。

どれも知識としては知っていた。ただ、音楽を学ぶ前提として整理してみると、「音」という言葉には物理現象と人間の感覚が混ざっていることに気づいた。

人間には聞こえない音がある。聞こえなくても音だ。

音は現象であり、感覚でもある

物体が振動すると、周囲の空気が押されたり引かれたりする。空気分子が密になる部分と疎になる部分が生まれ、その変化が波として伝わっていく。

教科書では音を上下する波線で表すことが多いが、実際に空気がその形で進んでいるわけではない。空気の密度や圧力の変化を、見やすく横波として描いている。

この意味での音は、人間が聞いていなくても存在する物理現象である。

一方で、普段「音」と呼んでいるものは、鳥の声、足音、騒音、音楽など、人間が聞いた結果を指していることが多い。

外にあるのは振動である。それを耳が受け取り、脳が処理することで、人間にとっての音になる。

複雑な音楽も一本の波になる

一つの楽器が出す音にも、さまざまな高さの振動が含まれている。さらに音楽では、歌声、ギター、ベース、ドラムなどが同時に鳴る。

それだけ多くの音が重なっているのに、ある一点へ届いた空気の圧力変化は、一本の波形として表すことができる。マイクが記録しているのも、その場所で重なり合った振動の結果である。

バンド全体の演奏も、時間に沿って上下する一本の波になる。単純なサイン波とは似ても似つかない、細かく入り組んだ形となる。

その波は分解できる。どの周波数がどれくらい含まれているかを調べれば、一本に重なっていた音を周波数ごとの成分として見ることができる。

ステレオ録音なら左右に別々の波形があり、実際の空間では音がさまざまな方向から届いている。

複雑な音を一度まとめて受け取り、その中から成分や意味を取り出す。この構造は、耳と脳が音を聞く過程にもつながっていく。

「聞こえない音」は音なのか

人間が聞き取れる周波数には限界がある。低すぎる振動や高すぎる振動は聞こえない。

それでも、物理現象としては存在しているため、超低周波音や超音波と呼ばれる。「聞こえない音」という言い方は矛盾しているようだが、現象としての音と、知覚としての音を分ければ理解しやすい。

さらに、耳から脳へ入ってくる範囲は全員同じではない。年齢や耳の状態によっても変わり、犬は人間より高い周波数まで聞き取れる。

私たちには何も聞こえないのに、犬だけが耳を動かして反応していることがある。人間には無音でも、犬には音として届き、音量や種類によってはうるさく感じているかもしれない。

同じ場所にいても、生き物ごとに脳へ入ってくる世界が違う。

自分にはどこまで聞こえるのかを試せるように、周波数を変えて音を鳴らすページを作った。

可聴域テストを試す

低い音から高い音へ動かしていくと、途中から音が消えたように感じるかもしれない。結果は耳だけでなく、イヤホンやスピーカーの性能にも左右されるため、医学的な聴力検査ではなく「音が鳴っているのに聞こえない」という感覚を試す簡単な実験として、音量を小さくして試してほしい。

脳は聞きたい音を選んでいる

耳に入った音が、すべて同じように意識へ上がってくるわけでもない。

騒がしい店でも、目の前の相手との会話は意外と聞き取れる。周囲では食器の音や音楽、別の会話が鳴っているのに、脳は自分が聞きたい声を選んでいる。これはカクテルパーティー効果と呼ばれている。

逆に、何かに集中していると、近くで名前を呼ばれても気づかないことがある。

この選別は便利だが、無料で働いているわけでもなさそうだ。騒がしい場所で長く会話したあと、静かな場所より妙に疲れていることがある。聞きたい声を追い続けるだけでも、脳はそれなりに働いている。

脳が選ぶ音は、習慣で変わっていく

脳がどの音を選ぶかは、いつも同じ基準で決まっているわけではない。

普段どんな音に触れているかによって、その「選び方」自体が少しずつ変わっていくように見える。

短い動画や音楽では、冒頭から派手な音が鳴る曲、すぐにサビへ入る曲、数秒ごとに展開が変わる曲が多い。こうした刺激は注意を引きやすく、脳にとって「選びやすい」音になる。

一方で、静かなイントロから始まる曲や、時間をかけてゆっくり積み上がっていく曲は、最初の数秒だけでは何が起きているか分かりにくい。

強い刺激ばかりに触れている時間が長いと、こうした曲を最後まで聞く前に注意が逸れてしまう、ということはありそうだ。

脳は聞きたい音を選ぶ。ただ、その「聞きたい」という感覚自体が、普段どんな刺激を浴び、何に注意を向ける練習を積んでいるかによって、形を変えていく。

音楽は人間に届いて初めて成立する

物理的に見れば、音楽も振動の組み合わせである。

しかし、人間はそこから旋律やリズムを聞き取り、声を識別し、記憶や感情と結びつける。同じ曲でも、ベースを追う人もいれば、歌詞ばかり聞く人もいる。昔は何とも思わなかった曲が、ある時期から急に響くこともある。

音楽を学ぶ前提として音を整理してみると、最後には人間の聞き方の話へ戻ってきた。

音は耳に届くだけでは終わらない。耳によって入力される範囲が決まり、脳によって選ばれ、意味を与えられて、ようやく自分にとっての音楽になる。

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