『世界にひとつのプレイブック』を見た。
2012年公開、デヴィッド・O・ラッセル監督の恋愛コメディドラマだ。精神科病院を退院したパットをブラッドリー・クーパー、夫を亡くしたティファニーをジェニファー・ローレンスが演じている。
見た理由はかなり単純だった。
『呪術廻戦』でジェニファー・ローレンスの名前があがっていたので、代表作の一つであるこの映画を見てみたくなった。
実際、ジェニファー・ローレンスはかなりよかった。単に見た目がきれいというだけではない。ティファニーの強引さ、危うさ、苛立ち、寂しさが、表情や立ち方から伝わってくる。感情を爆発させる場面にも勢いがあり、画面に出てくると自然に目が向いた。この役でアカデミー主演女優賞を取ったというのも納得できる。
ただ、映画を見終わって強く残ったのは、ジェニファー・ローレンスの演技だけではなかった。
登場人物が、かなり面倒なのだ。
個性的な登場人物たち
主人公のパットは別れた妻に執着している。ティファニーは他人の領域へ強く踏み込む。パットの父親は地元チームと賭け事に異常なほどのめり込む。家族は互いに感情をぶつけ、失礼なことを言い、簡単には引かない。
パットもティファニーも、自分の感情をかなり強く信じている。
パットの父親は地元のアメフトチームへの帰属意識が高すぎて勝敗に一喜一憂し、家族の行動までチームの験担ぎに結びつけてしまう。
パットは別居中の妻とやり直すことに固執し、ティファニーは彼の生活へ強引に入り込む。周囲の家族も、自分の考えや感情を相手へぶつけることをためらわない。
映画の中では、その衝突が関係を壊すだけではなく、関係を作る力になっている。
ぶつかり、怒鳴り、誤解し、それでも離れない。
パットは別居中の妻ではなく、壊れる前の自分へ戻りたい
パットが別居中の妻へ執着する姿を見ていると、単に一人の女性を取り戻したいだけではないように見える。
彼が戻りたいのは、結婚生活そのものというより、人生が壊れる前の自分なのではないか。
妻がいて、仕事があり、普通の生活を送っていた自分。
別居中の妻は、その過去へ戻るための入口になっている。
ティファニーも、夫を失った後の自分をどう扱えばいいのか分からず、誰かとの関係を通じて立て直そうとしている。
二人とも、失った状態を基準にしている。
だから執着するし、相手へ踏み込む。
この映画は、摩擦によって人がつながる話だった
『世界にひとつのプレイブック』では、摩擦が関係を前へ進める。
パットとティファニーは、最初から理解し合っているわけではない。互いにかなり失礼で、感情的で、危うい。
それでも、ダンスの練習を重ねる中で、二人の関係は少しずつ形になる。
二人はきれいに意思疎通できない。
明確なルールもない。
約束も感情も何度もずれる。
それでも関係を続ける。
共感できない人物を、面白く見られた
この映画の人物たちにはあまり共感できず、行動の動機は理解できても自分の内側から自然に書ける人物ではないと思いながら見ていた。
だが、共感できないことと、つまらないことは別。
過去にすがり、他人へ踏み込み、衝突しながら関係を続ける。
だからこそ、面白かった。


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