会社を辞めて、個人事業主になった。
退職後に大きく困ったことはない。後悔もしていない。それは、勢いだけで辞めたわけではなく、ある程度準備していたからだと思う。退職前にエージェント数社と話して案件の見通しは作っていたし、退職時点で次の案件も決まっていた。
独立というと、自由になる話ばかりが目立つ。でも実際には、仕事・お金・税金・社会保険・働く場所・将来の選択肢を、自分で見ていく範囲が増えるということでもある。この記事では、会社員から個人事業主エンジニアになった自分の経験をもとに、準備しておいてよかったことと、働き方・お金・場所の見え方がどう変わったかを整理しておく。
退職前に、案件の見通しは作っていた
個人事業主になる前に、まず見ていたのは仕事の見通しだった。
退職前に、エージェント3社ほどで情報収集した。直接契約は未知だったし、会社員時代の取引先とそのまま契約する形は、法的にも仁義的にもトラブルになる可能性がある。そこは軽く考えない方がいいと思っていた。
会社員として受け取る給与と、現場で発生している単価の間には当然差がある。自分の手元にくるお金は増えるだろう、という感覚はあった。業界的にも、即戦力になれる人は簡単には見つからない領域があり、需要はあるはずだという楽観もあった。
案件の見通しがあったことは、退職後に大きく困らなかった理由の一つだった。
会社員と個人事業主で変わったこと
会社員と個人事業主で、現場の仕事そのものが劇的に変わるとは限らない。開発ポジションで入れば開発をするし、管理ポジションで入れば管理もする。自分の場合、現場でやることは大きく変わらなかった。むしろプロジェクト内での裁量が大きくなることもあった。
一方で、会社員には会社員の仕組みがある。週報、勤怠管理、評価制度、全体会議。急な見積もりのフォローや、炎上プロジェクトへの応援。こうした仕組みと、現場でやっている仕事の距離が、自分にとっては少しずつ大きくなっていた。
会社に所属していたからこそよかったこともある。何をやればいいかを自分で必えずに過ごせた日々もあったし、厳しい上司から技術だけでない、エンジニアとしての考え方や仕事の進め方を学べたこともあった。ただ、自分には、組織の仕組みに乗り続けるより、自分で選べる範囲を広げる方が合っていた。会社内で自分のやりたい方向に進むビジョンが見えなかった。
| 項目 | 会社員 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 案件 | 会社や部署の都合で決まる | 自分で選ぶ余地が増える |
| 評価 | 上司や会社制度に乗る | 契約、成果、継続で見られる |
| 雑務 | 週報、勤怠、社内会議がある | 必要な範囲に絞りやすい |
| お金 | 給与として入る | 売上、経費、税金を自分で見る |
| 場所 | 会社や案件の条件に左右される | 交渉次第で選択肢が広がる |
| 将来 | 会社内の役割や昇進も関係する | 法人化、移住、学び直しなどを自分で考えやすい |
雇用保険や手続きは、窓口で確認する
退職後の手続きで確認しておくべきものはいくつかある。
| 確認項目 | 見ておくこと |
|---|---|
| 生活費 | 収入が空いても何ヶ月持つか |
| 案件 | 退職後の仕事の見通しがあるか |
| 健康保険・年金 | 退職後にどう切り替えるか |
| 雇用保険 | 自分のケースで対象になるか |
| 開業届 | いつ出すか |
| 確定申告 | 会計ソフトや経費管理をどうするか |
| 信用まわり | クレカ、賃貸、ローンなどに影響がないか |
自分の場合は再就職手当を受け取った。ただし、制度変更や個別の状況によって変わるため、ネットの記事だけで判断しない方がいい。個人事業主になる予定があるなら、それも含めてハローワークの窓口で相談した方がいい。
注意点として、ハローワークには「この日に来てください」という指定日がある。時期によっては混む。スケジュールに余裕を持っておいた方がいい。
信用回りについて、自分の場合は特に影響を感じたことはない。
個人事業主になって、お金と場所の自由度が変わった
個人事業主になって大きく変わったのは、お金の見え方だった。
会社員時代は、税金や社会保険は給与から引かれるものだった。個人事業主になると、売上から経費・税金・保険・年金を自分で見ていくことになる。実際に口座から出ていくので、社会制度への実感はかなり強くなる。ただ、自分の場合は会社員時代に引かれていたものと比べても、納得して受け入れられる感覚があった。入金額もかなり変わった。数倍になった。会計もソフトを使えばエンジニアにとってはそこまで難しくなかった。
もう一つ大きかったのは、働く場所の自由度だ。個人事業主になってから、福岡に移住した。会社員のままだったら出てきにくかった選択肢だと思う。
独立して半年ほど経ったころ、1ヶ月ほど仕事をせずに過ごした時期がある。資格取得のためにまとまった時間がとりたかったからで、引越し作業以外は沖縄で過ごした。当時の東京の客先に相談したところ、1ヶ月後にまた福岡からフルリモートで業務するという条件で再契約してもらえることになった。単なる休暇ではなく、働き方を調整できるようになった実感として大きかった。
いまは趣味の延長で通信制大学で学んでいる。アイデアを試す選択肢が、個人事業主になってからより具体的に見えるようになった。
後悔はないが、準備はしておいた方がいい
会社員から個人事業主になって、後悔はしていない。
案件の見通しは作っていたし、手続きも確認していた。お金や税金、社会制度への意識も変わった。働く場所や将来の選択肢も広がった。
ただし、勢いだけで辞めればいいとは思わない。会社員には会社員の安定がある。個人事業主には個人事業主の自由があり、その代わり自分で見る範囲が増える。
会社を辞める前に、案件・お金・手続き・働く場所・次にやりたいことは一度見ておいた方がいい。準備しておくと、独立はただの退職ではなく、自分で働き方を組み替える選択肢になる。



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